偽る恋のはじめかた









「じゃあさ、今はどう思ってる?桐生課長って、梨花の好きなイケメン高スペック男性でしょ?」


「ないね!」



清々しい程に、歯切れのいい口調で言った。これは、嘘偽りなく気にも止めてない感じだ。



「・・・・・それはなんで?」


「そりゃあ、あんな空気の読めてない俺様上司なんて嫌でしょ!」


その通り過ぎて、返す言葉が見当たらない。
うんうん、そうなんだよね。桐生課長の本性を知るまでは私もそう思っていた。


『その空気読めない俺様上司は、梨花(あなた)に好きになって欲しくてやってるんだよ?』

と、喉まで押し上げてきた言葉を引っ込めた。


はあ。自然と溜息が漏れる。私は、残念な気持ちでいっぱいだった。


(・・・・・・ん?なんでこんなに私が落ち込んでんだ?)


思った以上に残念がる自分に驚いた。いつのまにか、桐生課長の恋を応援していた・・・?


好きな人のタイプになるために、俺様上司になるため漫画を読んで参考にしたり。

やってることがズレてるけど、それを本気でやってるところを見たら、応援もしたくなってしまう。

桐生課長のヘッポコな様子が頭に浮かんできて、思わず笑ってしまった。

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