偽る恋のはじめかた
「例の話だけど・・・・・・」
周りに誰もいないことを確認しながら問いかける。心なしか不安そうで、浮かない表情をしているように見える。
「分かってますよ・・・・・。梨花の理想とする俺様上司に、仕上げるつもりです」
私の言葉を聞くと、桐生課長の表情は、パッと明るくなり嬉しそうに微笑んでいる。
(いつも無愛想でいないで、普段からその表情すればいいのに・・・・・)
「あっ、嬉しいニュースがありますよ。
梨花の理想の俺様上司が分かりました」
「それは、ぜひ知りたい!
それはどんな風な・・・・・、おっと、ちょっと待って」
急に前のめりになったと思ったら、慌ててポケットから黒い手帳とボールペンを取り出した。どうやら、メモを取るつもりだ・・・・・。
———真面目か。