偽る恋のはじめかた
ほんのり照らされる間接照明に、白を基調としたテーブルのある小上がり個室で1人。慣れない場所に、緊張しながら待っていた。
手持ち無沙汰で、メニュー表を広げて見てみると、目が飛び出る値段だったので「たかっ」と、一人なのに声を出してしまった。
一人暮らしOLがランチ代で出せる値段を、簡単に上回っている。
(今月、金銭的余裕ないんだけどな・・・)
メニュー表と睨めっこしていると、扉が開く音がした。
「お待たせ。遅くなってすまない」
桐生課長は、急いできたのか癖のある髪が少し乱れていた。
「いえ、お店予約して頂いてありがとうございます。」
「例の作戦を立てるには、個室の方がいいかと思ってね・・・・・」
「あのぉ、ここ高そうなんですが・・・・・」
メニュー表を見て目が飛び出る値段だったので、ヒソヒソと小声で聞いた。お財布の中身が心配で美味しく食べられそうにない。
「ああ、もちろん俺が奢らせてもらうから、好きなやつ頼んで?」
「わっ、いいんですか?ご馳走になります」
冷静なふりをしつつも、内心喜びまくりな私は、心の中で盛大なガッツポーズをする。お金の心配がなくなり、ホッとしたと同時に現金なもので、お腹も空いてきた。