偽る恋のはじめかた


「ねえねえ。桐生課長めっちゃ良くない?」

私のデスクに書類を置きながら小声で話す彼女は、同期の雨宮 梨花(あまみやりか)

お人形みたいに可愛らしくて、とにかく男からモテる。モテることを自分でも自覚していて、常に高スペックの男性を探して合コン三昧だ。そこは好きになれない部分なのだが、さっぱりした性格でウマが合うので、同期の中で1番仲が良い。


「梨花はこの間合コンで知り合った人と付き合ったばっかりでしょ?」


「あー。大手企業の営業ね。まあ、良い物件だからまだ捨てられないけど、課長もありかな」


梨花のイケメン高スペックレーダーにも反応したようだ。普通の女は、高スペックはライバルが多いので諦める人も多いけど、顔が良い女は自信に満ち溢れていて羨ましい。



他の女性社員達も、カッコいいと言って色めき立っていた。心なしか女性社員の化粧が濃い気がする。



しかし、この束の間の課長フィーバーは、すぐに終わりを告げることになる。
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