偽る恋のはじめかた






桐生(きりゅう)課長が移動してきてから1週間が経つ頃、人事部は今までにないくらい重苦しい空気に包まれている。



着任早々、女性社員を騒がせたイケメン課長は、性格が悪かった。俺様課長と言わんばかりに、暴言に近いようなことも平気で言って来る。



最初は女性社員達が競い合うように課長に話しかけていた。


「課長、今日のお昼食堂でご一緒しませんか?」

「君達とお昼を共にすると仕事が進むのか?」

「えっ、いや、コミュニケーションを・・・・・」

「コミュニケーションは就業中に充分取れてると思うが・・・・・」

「・・・・じゃあ、大丈夫です」



冷たい態度に加えて、終始怪訝そうな態度を見せる。面倒だと言わんばかりに大きな溜息をついたりもした。


女性社員達の熱の冷めようは早かった。
着任初日のザワつきが嘘のように、競い合うように課長に話かけていた女性社員達は日に日に減り・・・・・、



———現在、自ら課長に話しかけようとする者はいなかった。
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