偽る恋のはじめかた
06 変化
⋆⸜꙳⸝⋆
「椎名さん、今日のお昼、何処で食べたんすか?食堂にいなかったから」
デスクに戻ると声を掛けられた。隣のデスクからひょこっと顔を出して話しかけてきたのは黒須 怜君だった。
彼は入社2年目の後輩で、4月からデスクが隣になり、割と話をする仲だった。
ほんのり染めた茶髪で、毎日きちんとスタイリングされている。ソフトツイストパーマをかけているからスタイリングには、時間はかからないと言っていた気がする。
笑うと見えるエクボがチャームポイントで、社内で黒須君を狙っている女子の話もよく耳にする。
「今日は、食堂じゃなくて外で食べたんだ」
「食堂で探したんですよ?俺も今度連れてってください〜」
彼は少し甘ったるい口調で話す。年下感満載で耳障りは悪くない。陰で年上キラーと呼ばれるだけはある。こうやって、よく話かけてくれるから、懐かれてるのかな、と勝手に思ったりしている。