偽る恋のはじめかた


「桐生課長、お疲れ様です〜。なに飲まれてるんですか?」


桐生課長の表情は、分かりやすくパッと明るくなった。それもそのはず、この男心を捕まえる猫撫で声の正体は想いを寄せる梨花だった。




「ビール・・・・・飲んデ・・・・・イル」




突然話しかけられたのが想いを寄せている梨花で、驚いたのか何故かカタコトになっていた。


「ビール好きなんですか?」


「・・・・・ああ」


緊張しているのか、口数が少ないが口角が緩みっぱなしで、喜びが隠しきれていない。


見てる側からすると、桐生課長が梨花を好きなことが丸わかりだ。そのくらい、嬉しさが表情に出ている。



———あんな顔するんだ。
< 69 / 261 >

この作品をシェア

pagetop