偽る恋のはじめかた
「桐生課長、お疲れ様です〜。なに飲まれてるんですか?」
桐生課長の表情は、分かりやすくパッと明るくなった。それもそのはず、この男心を捕まえる猫撫で声の正体は想いを寄せる梨花だった。
「ビール・・・・・飲んデ・・・・・イル」
突然話しかけられたのが想いを寄せている梨花で、驚いたのか何故かカタコトになっていた。
「ビール好きなんですか?」
「・・・・・ああ」
緊張しているのか、口数が少ないが口角が緩みっぱなしで、喜びが隠しきれていない。
見てる側からすると、桐生課長が梨花を好きなことが丸わかりだ。そのくらい、嬉しさが表情に出ている。
———あんな顔するんだ。