偽る恋のはじめかた
08 この気持ちの正体は


⋆⸜꙳⸝⋆



朝から苛立つ心をなんとか抑えて、会社へと向かう。なぜこんなに心が荒ぶっているのか、自分でも分からなかった。無償にイライラしてしまう。


桐生課長は上司として当たり前の行動をしたんだ。男としてじゃなく、上司として部下に手を出さずに帰っただけだ。・・・・・・うん。常識があるってことだ。


何度も自分を納得させる理由を浮かべては、私の心は素直にスッキリしてくれなくて、心の奥底は黒いモヤで覆われたままだった。





「おはようございま〜す。椎名さん、昨日大丈夫でした?」

「あぁ、黒須君。おはよう。うん、大丈夫だったよ」


先に出社して隣のデスクにいた黒須君にも、いつもより素っ気ない態度を取ってしまった。自分でも分からないけど、モヤモヤと心が荒れている。

桐生課長に手を出されなかったから?
手を出して欲しかったわけではないけど・・・・・・・、
部屋に上がって、当たり前のように手を出されないのは、なぞにショックを受けた。


———私って、そんなに女としての魅力なし?

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