偽る恋のはじめかた
「黒須君、一つ聞いていい?」
「なんすか?」
「黒須君が女の人の家に上がって、その人が酔っ払ってベッドにいたらどうする?」
「それは、完全にいただきますね。」
「・・・・・・だよね?!」
「そんなチャンスに、いただかなかったら男じゃないっすよ」
即答で応える当たりが黒須君らしい。
黒須君が言うように、男だったら普通手を出すよね・・・・・・。桐生課長にとって、私は女として見られていない。それか、本当に残念な男。
———彼はどっちだろう。
「・・・・・・桐生課長に手出されなかったんすか?」
「なっ、んで。それを?」
「だって、昨日一緒に帰ったでしょ?」
なんて返事をしていいのか分からず、答えを返せなかった。
「安心してください。俺なら優しくいただきますよ?」
「いや、逆に私がいただけないのよ」
年下の後輩に手を出すなんて、先輩として出来ない。冗談には乗らずに冷静に返す。