偽る恋のはじめかた
———・・・・好きかもしれない。
私、桐生課長が好きかもしれない。認めた途端に胸の高鳴りは強くなって、その鼓動がこの気持ちを認めざるを得なくなる。
「椎名さん?」
桐生課長の呼びかけで考え込んで黙り込んでいたことに気付いてハッと我に返った。
「だ、大丈夫です・・・」
自分の感情に気付き始めてしまったので、桐生課長の顔をまともに直視できない。軽くお辞儀をして自分のデスクに足早に戻った。
自分の席に戻り、熱った顔を隠すように手で包み込んでいると、隣のデスクから顔を出した黒須君と目が合う。
「愛の告白でもされたんすか?」
「そ、そんなわけない・・・・・・でしょ」
核心を突かれて、言葉が途切れ途切れになってしまう。