偽る恋のはじめかた
冷静を装い返事をしたが、顔の火照りは一向に収まってはくれない。
「もしかして気付いちゃったんですか?」
「・・・・・・な、なにが?」
「桐生課長のことを好きって」
黒須君の言葉に驚きを隠せない私は、その時整理していたデスクにある書類やファイルを、乱雑に落としてしまった。
「大丈夫すか?そんなに慌てちゃって・・・・・・」
黒須君は私より先にしゃがみ込むと、床に散りばめられた書類とファイルを集める。私も慌てて膝を床につけると、彼の顔がすぐ目の前にあって、一瞬胸がどよめいた。