偽る恋のはじめかた
黒須君に告白みたいなことをサラッと言われて、追求する勇気も時間なくて、結局うやむやになってしまった。
隣のデスクということもあり気になってしまい、心ここに在らずの状態で、なんとか午前中の仕事をこなした。
いつもは「〜すよね」「〜っすね」と崩れた敬語を使うくせに、さっきはいきなりタメ口で言われたので思わず心臓が、どきっと跳ねてしまった。
普段敬語のくせに、突然タメ口になるのは年下男子の反則技だ。あれは・・・・・・ずるい。
精一杯平気なフリをしているが、内心はまだドキドキしている。私の恋愛偏差値は、黒須君よりもだいぶ低いだろう。
見事にドキドキさせられてしまっている。
そんな私の元に「今日の作戦会議について」と題された一通のメールが届く。
差出人は桐生課長。
あっ、今日は金曜日、桐生課長と作戦会議という名のランチの日・・・・・・。
いろいろありすぎて忘れていたけど、月曜日と金曜日に作戦会議という名目で桐生課長とランチに行く約束をしていた。
桐生課長とランチに行けることを楽しみにして胸が躍ってしまっている。対面で話したら『好き』の気持ちが溢れてきそうで不安だ・・・・・・。
この気持ちは勘違い。そう、勘違い。
好きという感情が溢れ出しそうな心に何度も暗示をかけた。
それに加えて、黒須君に言われた言葉で心が動揺して入り乱れている。たくさんの感情がありすぎて、キャパオーバーで私の心はパンク寸前だ。