偽る恋のはじめかた
09 作戦会議という名のランチ
⋆⸜꙳⸝⋆
作戦会議という名のランチのお店は、この間と同じお店を指定された。
前来た時と通された席は違かったが、テーブルのある小上がり個室で落ち着く空間だった。
私の方が先に到着していて、桐生課長はまだのようだった。前回とは違うのは、ドキドキと緊張しながら桐生課長が到着するのを待っているということ。
「椎名さん、お待たせ」
桐生課長は腰を下ろすと、ネクタイに手をかけ慣れた手つきでネクタイを緩めた。その所作一つに目が奪われて、ぽーっと見惚れてしまう。
「何食べたい?」
優しい言葉と共に視線が私に向けられる。その瞳と目が合うとドキッと心臓が飛び跳ねた。
・・・・・・特別なにもしてないのにカッコいい。
好きだと自覚すると、今までの何倍もカッコよく見えてしまうから、恋ってものは不思議だ。
ほんの少し前までは、同じシチュエーションでもドキッとなんてしなかったのに・・・・・・。
なのに、今は桐生課長の所作一つで私の心は掻き乱されてしまう。