真夏に咲いた奇跡の恋花火
それなら最初から断れば良かったのにって話だけど……そんな簡単な問題じゃないんだ。

なぜなら──誘いを受け入れようが断ろうが、どっちみち、私が夏祭りに参加することはすでに確定しているから。



「やっぱり、断った?」

「いや、保留にしてる。最初は断るつもりだったんだけど……皆吉さんが行くなら行こうかなって」



えっ。

思わず出た声は、後ろから来たバスの音にかき消されてしまった。


歩くの面倒くさいってあんなに嫌がってたのに。
もしかして食べ物に釣られた?

というより……。



「じゃあまた明日。気をつけてね」

「あっ、うんっ」



その場に立ち尽くしていたら、乃木くんはバスの中へ。


私が行くならって、一体どういう意味……?


頭をひねらせていると、何か言い忘れたのか、乃木くんが「あっ、そうだ」と振り向いた。



「食べかすのことは、みんなには内緒でお願いしますっ!」



端正な顔の前で両手が合わさった瞬間、ドアが閉まり、バスが動き出した。


行っちゃった……。
聞きたいことたくさんあったのに、何1つ聞けなかった。

……まぁ、明日聞けばいいか。


とはいったものの、やっぱりどうしても気になってしまい、悶々と考えながら帰宅したのだった。
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