真夏に咲いた奇跡の恋花火
「今年の夏は過去最高に楽しい夏になりそうだ……」

「くれぐれも羽目外すなよ」

「大丈夫だって! 先生達見回りに来るし。それよりさ、なんでオッケーしてくれたの?」



ドキッと心臓が揺れたのを感じた。

了承したけど、理由までは話してなかったみたい。



「何か心境の変化でもあった?」

「別に。夏休み部活三昧で彼女もいない手島くんが可哀想だなと思っただけ」

「同情にしてはだいぶ刺々しいな。そういうお前も彼女いねーだろ」

「まぁね。あと、あの個性つよつよ軍団の中でお前1人はきついだろうなって」



ツッコまれるも、怯むことなく淡々と答えている。


……だよね。正直に言ったらますます騒ぎそうだし。言えるわけないか。

ただ、あまりにも堂々と話すもんだから、ちょっとビックリしている。


これも理由のうち、なのかな……?



「ふーん、なんだかんだ俺のためを思って考えてくれたわけね」

「そういうこと。でも、浴衣美女に目移りしたら別行動だからな。チラ見もダメだぞ」

「うわぁ、鬼畜ぅー。さっきの感動返せよぉー」



口を尖らせた手島くん。プイッとそっぽを向いて先に行ってしまった。



「ごめん皆吉さん。さっき、校舎裏で話したこと、みんなには……」



その背中を見送ると、残された彼がおもむろに口を開いた。


困ったような笑顔、口に当てている人差し指。
そして……キーワードの校舎裏。


何を内緒にしてほしいのかを察した私は、親指と人差し指で丸を作り、静かに頷いた。
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