真夏に咲いた奇跡の恋花火
確信するやいなや、瞳を輝かせて駆け寄ってきた。

じゃらじゃらとアクセサリーの擦れる音が鼓膜に響いて、バッグを持つ手に力が入る。



「にしても全然変わってねーなぁ。夏に全身真っ黒って。暑苦しそ〜」

「……平井(ひらい)くんこそ。相変わらず、派手、だね」

「そうかー? お前が地味なだけだろー」



途切れ途切れに返答した私に、容赦ない言葉を浴びせる彼。


……本当、変わらないね。

平気で人を見下すところも、無神経に物を言うところも。全部、あの頃のまま。


少しは大人になったのかなって一瞬期待したけれど、変わったのは背丈と声の低さだけだった。



「ってかやけに大荷物だな。何買ったの?」



黙り込んでいたら、買い物袋を乱暴に奪われた。



「浴衣……? 祭りにでも行くの?」

「っ……そう、だけど」



ドクンドクンと心臓が不吉な音を立て始める。


やめて、返して、触らないで。


心の中で決死の叫びを上げ、手を伸ばす。

しかし、彼から小さな笑い声が漏れた瞬間、なけなしの勇気はいとも簡単に消えてしまった。
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