星降る夜に
目覚めの朝
「竹取物語は、成立年、作者ともに不詳ではあるが日本最古の物語の候補として挙げられる物語である。

そしてこの時代の『月』の捉え方に関する貴重な・・・」



相も変わらず退屈な授業・・・大学受験も迫り来るこの三年の秋。

なんだってこんな事を学ばなければならないのか・・・。

もちろん「理屈」とやらならわかってはいるが。



21世紀以来急速に進展し、人類を苦しめた地球温暖化問題、環境問題、人口問題、資源問題・・・

例を挙げればキリがない程に、山積みな状況が続いていた。


そんな中、今から約100年程前、つまり22世紀の初頭、月で新たな代替燃料候補の埋蔵が確認された事をきっかけに世界中の国々が争う様に月への進出を試みた。


欲望の力は凄まじく、それまで滞っていた宇宙開発は嘘のように進展し、不可能とまで言われていた入植にまで成功した。

それによって月に関する関心が高まり、教育においても『月』を重点的に扱っていこう、とお偉いさん達が決定して今に至るというわけだ。


こう言ってみると聞こえはいいが、実際は大昔のネコ型ロボットが登場するアニメの世界みたいな世界からは程遠い。

月へ移住できたのは、富と権力を持ったほんの一握りの人間だけだったし、大多数の俺みたいな一般人はこれまで通り地球で暮らしている。


映画や小説みたいに、何もかもが皆に行き渡るなんていうのは、幻想に過ぎなかった。


とはいえ、別に俺は今の生活に大した不満があるわけでもない。

ちょっと刺激にはかけていて、退屈な時も多々あるが気の置けない友達やクラスメイトがいて、それなりに楽しい日々を送っている。

まぁこういうのも恥ずかしいが、好きな人の存在が・・・
「じゃあ、受験も近いってのに授業も聞いてない余裕かましてる一之瀬、ここ読んでみろ」


物思いに耽るあまり、自分が当てられる番だという事にすら気が付かなかった自分の迂闊さが嫌になる。

これで今週3回目だ。

最近思うがこの先生、絶対俺はイジるのが半分生き甲斐になってるよな・・。
「この衣着つる人は、物思ひなくなりにければ、車に乗りて、百人ばかり天人具して、昇りぬ。翁は・・・・」
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