星降る夜に
直接会いたかったが、学校の欠席している処に押しかけるのも憚られたので家に帰るとすぐさま、夏海の携帯に電話してみる。


「もしもし?」


「夏海?俺、結城だけど・・・」


「あぁ、結城か~。どうしたの?
もしかして学校休んだから心配でもしてくれた?」

よく聴いてみれば、茶化す夏海の声にも元気がない。

「ま、まぁな。体調はもう万全?」

「あぁ、今日休んだのは風邪じゃないんだ。

・・・家の用事ってやつかな。」


「なぁ夏海・・・俺に隠してる事あるか?」


「え?・・・
そっか。

もう聞いちゃったんだね。」



「なんでだよっ?
悩んでたんならなんで俺に相談してくれなかったんだよ?」


「・・・けない。」

「え?」
「言えるわけないなじゃん・・・

あたしだって月なんて行かずにみんなとここに居たかったし、それに・・・、もっと結城と一緒に居たかったよぉ・・・」


予想外の夏海の苦しげな、嗚咽交じりの話し声に自分が何を言いたかったのかさえわからなくなる。


「夏海・・・本当に月に行くつもりなのか?」


「うん。もうどうしようもないよ・・・お父さんもお母さんにも迷惑かけられないし、二人ともあたしの為だって・・・あたしは家族3人でここに居たいけどさ・・・どんなに考えてもわかんないよ

ねぇ、あたしどうすればいいの・・・?」


なんで今まで気づけなかったんだろう。

今になって考えてみれば、最近様子がおかしい事も多かった。

夏海はこんなに1人で悩んでいたのに。


それなのに、何も言えない自分の無力さが、ただただ悔しかった。


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