星降る夜に
「あはは・・・ごめんね。
結城にまでこんなこと愚痴っちゃって。
こんな事言われても困るよね。

実はね、もうあたし月へ行くの決まってるんだ。
今日休んだのはその準備なの。

明日の昼過ぎにね、日本宙間センターから月に向けて飛び発つんだって。
向こうで大学受ける為の準備とかあるからもう行かなくちゃいないらしくてさ。
ごめんね、こんなギリギリまで黙ってて。」

「明日?いくらなんでも急すぎだろ・・・
夏海今どこに居るんだよ?」

「今はね、東京宙間エレベーター近くのホテルに泊まってるんだ。

あたし宙間エレベーター乗るの初めてだから、楽しみなんだ」

内容とは裏腹に少し震える夏海の声に、目頭が熱くなる。

こちらも平静を装うのがやっとだけれど。

「宙間エレベーター・・・あれと月行くのに何の関係があるんだよ
?」


「なんかね・・宙間エレベーターって地上と宇宙空間の基地である、日本宙間基地を繋いでるらしくてね、普通はそこで地球を見たりして楽しむ観光スポットなんだけど、そこから月への輸送船が出てるんだって。
これくらい知らないと受験できないぞ~」

こんな時でも笑いあっていると、明日夏海が月へ行ってしまうなんて、信じられなくなる。

話し出すと、もうお互いとまらなかった。
気づけば何時間も経っていた。
だが残酷にも別れの時はやってくる。

「ごめんね、そろそろ明日の準備しなきゃいけない時間みたい。

今までありがとね。
最後に結城の声が聞けて嬉しかったよ。
< 6 / 10 >

この作品をシェア

pagetop