星降る夜に
電話が切れると、急に視界が霞んでくる。
今までの思い出が駆け巡り、感傷的になってしまう。

だがそんな時間はない。
パソコンの電源を入れると、すぐさま宙間エレベーターへの行き方を検索してみる。


しかしながら、長電話してしまった為、新幹線などを利用しようにも、もう時間がなかった。
しかし諦めるつもりは全くない。


すぐさま俺はヘソクリをかき集め、財布に詰め込み、親には友達の家に泊まると言い訳し、家を飛び出した。


乱暴に自転車を漕ぎ駅に向かう。


自転車を乱暴にとめると、そこに止まっていたタクシーに乗り込む。

「運転手さん、宙間エレベーターまでお願いできますか?」

「宙間エレベーターってあの東京にある、あの宙間エレベーターのことかい?あれだったら正直、私が言うのもあれだが、都会の方まで出て、新幹線を使った方が速いし、安くつくと思うよ」

「いえ、明日の昼までに着かないといけないんです。お金だってちゃんと持ってます。だから・・・」

「わかったよ。もしかして誰かの見送りかい?」

「はい、大切な人の見送りです」

「そうか。ならおじさんも頑張るよ。
着いたら起こしてあげるから、明日に備えて寝てなさいな
多分12時までには着くと思うよ」


「ありがとうございます。お言葉に甘えて」


とは言ったものの、中々眠れない。

そんな俺を気遣ってか、運転手さんが話しかけてくる。

「大切な人ってのは、彼女さんかい?」

「ん・・・まぁ。彼女って言っても怒られないとは思います。」

「そうかぁ。前にも君みたいなお客さんがいてね・・。

いつの時代も別れってのは悲しいものだね。」

「そうですね・・。  
でもどうしようもないんです」

「まぁねぇ。ただ君が後悔しない別れを祈るよ」


・・・気が付くともう夜が明けていた


「おぉ起きたかい、なんとか12時前には着けたよ、頑張って行って来なさい」

「夜中に無茶なお願い聞いていただき本当にありがとうございました」

「いやいや、礼には及ばないよ。
私も自分の仕事に改めて誇りを持つことができた。
こちらこそありがとう」


運賃を払い運転手さんに別れを告げた。

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