夕陽を映すあなたの瞳
 電車で約束のホテルに向かいながら、心はスマートフォンのメッセージを読み返す。

 昨日クラスの皆に、同窓会の日程は5月13日の土曜日19時~でどうか?と送っておいた。
 ほとんどの人がOK。
 仕事があるという数人も、終わり次第駆けつけるとのこと。

 だが、到着が遅くなる為、二次会があるとありがたいと言われ、そちらについては慎也がカラオケのパーティールームを予約してくれることになった。

 心はスマートフォンを閉じると、夕べの愛理との会話を思い出す。

 ずばり、会費っていくらぐらいの設定にすればいい?と電話で相談してみたのだ。

 「男の子達は、やっぱりお酒飲み放題の方がいいよね?でも女の子はあんまりお酒飲まなかったりするし…」

 愛理も、そうだよねと同意して一緒に考えてくれた。

 「そしたら、女の子の会費はちょっと男子よりおまけしてもらう?一人500円くらい男の子達に負担してもらって。それでブーブー文句言ってくる人はいないと思うよ」
 「そうだね。そうさせてもらえるか、今度みんなに提案してみるよ」
 「うんうん。それがいいよ」
 「ところで…」

 心は、一番気になっていたことを聞いてみる。

 「ねえ愛理は、会費いくらなら妥当だと思う?逆にいくらだったら、高い!って感じる?」
 「うーん、そうだな…」

 考えているのか、愛理はしばらく押し黙った。

 「あくまで私の場合だよ?」

 最初にそう断る愛理に、うんうんと頷いて先を促す。

 「私だったら、7千円が妥当かな。8千円だと、ちょっと高いなって思っちゃうかも。逆に4千円とかで、うわー、嬉しい!と思って行ったのに、お料理もしょぼくてドリンク別料金だった時は、会費もうちょっと高くてもいいから、違うお店が良かったなって思ったこともある」

 なるほどーと、心は天井を仰いで考え込む。

 「安けりゃいいってものでもないのね。確かにそうだわ。そうすると目指すのは、えー!こんなに美味しくてこのお値段?的な」

 あはは!と愛理は笑い出す。

 「まあね、そうだったら嬉しいけど。でもそこまで気にすることないよ。幹事って、思ってるよりずっと大変だもん。細かいことは気にせず、心と昴が決めてくれたらいいんだからね。みんなもそう思ってるよ、きっと」
 「ありがとう!明日、伊吹くんとも相談してみるね」

 そう言って電話を切ったのだった。

 (愛理に先に聞いておいて良かった。今日行くお店が、あんまり高くないといいなあ。しかもお料理も美味しくてフリードリンクで雰囲気も良くて、みんなが楽しめるお店…って、そんなとこあるかな?)

 高望みする自分に思わず苦笑する。

 35人いるクラスメイトの全員が満足することなんて、ほぼ不可能だろう。

 それでも心は、出来るだけ皆が楽しめるようにと願い、あれこれ考えを巡らせた。
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