夕陽を映すあなたの瞳
 楽しそうに愛理と話す心を見ながら、昴は思い出す。

 サラと話している時の心も、こんなふうに無邪気で楽しそうだった。

 ショッピングモールで買い物をし、ランチをした時も、昴は盛り上がる二人の様子を黙って見ていた。

 くるくる変わる心の表情はまるで子どものようで、昴はたたぼーっと見とれていた。

 サラの為に浴衣をプレゼントしたいという心に胸が熱くなり、そんな彼女に自分も何かしたいと、休みの日に一人で心の浴衣を買いに行った。

 どんな色が似合うだろうかと考えていると、ふと、海に沈む夕陽を見つめる心の横顔が思い浮かんだ。

 とても優しく穏やかで、目が離せなくなるほど綺麗な横顔。

 そして昴は、海と夕陽に似た色の浴衣と帯を選んだ。

 浴衣を着た心はとても美しかった。
 サラに、二人はつき合ってるのか?と聞かれた時は、思わずドキッとした。

 サラを送り届けたあと、二人きりになり、車を降りて心に向き合った瞬間、思わず胸に抱きしめていた。

 あの時の自分は完全に思考回路が止まっており、無意識の行動だった。

 そんなことは初めてで、一体どうしたのかと、昴は自分で自分が分からなくなっていた。

 (こんなに頭で考えても分からないなんて。どういうことだ?どうやったら理解出来るんだ?数式とかで解けないのか?)

 心のことを思い出すたびに、ブツブツとそんなことを考えていた。
< 103 / 140 >

この作品をシェア

pagetop