夕陽を映すあなたの瞳
 「はあー、素敵な1日だったな」

 心は、手にしたブーケに微笑みながら、駅からマンションへの道を歩いていた。

 披露宴でも、桑田と沙良はとても幸せそうで、本当にお似合いのカップルだった。

 (いやー、桑田さんもなかなかのかっこ良さ。美男美女だったなー。やっとお二人のツーショットが見られたし、キスシーンも。キャッ)

 思わずブーケで顔を隠す。
 それは沙良が持っていたブーケ。
 そう、心はブーケトスのブーケを受け取ったのだった。

 いや、正確に言うと、沙良が心めがけて投げたのだ。

 独身女性が、ワイワイと新婦の後ろに集まった時、心は離れた場所でその様子を見守っていた。

 まだ結婚に興味のない自分より、他の人が受け取った方がいいだろうと思っていたからだ。

 すると沙良は、距離を測るようにじーっと心を見つめてからくるりと向きを変え、大きく後ろにブーケを投げた。

 キャーと女子達が手を伸ばす上を超え、ブーケは心の胸元にポフッと届いた。

 え?と、思わず両手で受け止めると、沙良が、どうよ?と言わんばかりに親指を立てて笑いかけてきた。

 (沙良さん、ナイスコントロールだったな。でも良かったのかなー、私なんかがもらって)

 ほろ酔い気分で、ふわふわとした足取りのまま、心はマンションへの角を曲がった。
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