夕陽を映すあなたの瞳
 「心ちゃん、この間は結婚式に来てくれて本当にありがとう!」
 「こちらこそ!お招きありがとうございました。とーっても素敵でした。お二人の幸せのお裾分けをいただきましたよ」
 「ふふ、ありがとう」

 沙良は笑って心に紅茶を淹れてくれる。
 心は改めて結婚祝いを渡しに、沙良と桑田の新居にお邪魔していた。

 「うわー、メモリアルプレート?素敵ね」
 「はい。挙式の年月日が刻まれてるんです。節目で使っていただけたら」
 「ありがとう!大切にするわね」

 沙良は心に笑顔で礼を言う。

 しばらく結婚式の写真を見ながら、あの日の感動に浸ったあと、沙良が、ところで…と話題を変えた。

 「心ちゃん。そのー、伊吹くんは元気?」
 「伊吹くんですか?沙良さん、妙に伊吹くんの話をしますよね」
 「え、そうね。まあ、ちょっと気になって」
 「ふーん。伊吹くん、元気にしてますよ。ちょうど沙良さん達の結婚式の日に会ったんです」
 「えっ、そうなの?」
 「はい。マンションに帰ったら、エントランスで伊吹くんが待ってて」
 「ちょ、ちょ、ちょっと心ちゃん。その話、詳しく話してくれる?」

 真剣な顔で訴えてくる沙良に、半分首をひねりながら、心はいきさつを話す。

 「なるほど。スマホを届けにね」
 「そうなんです。それで沙良さんの結婚式の話をしたあと、アメリカのサラの話になって。なんだか、さらって名前に縁があるなーって話してたんです。将来女の子が生まれたら、さらって名前もいいねって話して。そしたら伊吹くんがね」
 「うんうん、何?」
 「伊吹 さらは?って言うから、いいんじゃないって答えたら、そのあとに、伊吹 心はどう?って聞くんです。あり得ないですよねー」

 ガチャッと沙良は、紅茶のカップを落としそうになる。
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