夕陽を映すあなたの瞳
 「うーん…」

 休日の夕方。
 自宅のソファで腕を組みながら、昴は考え込んでいた。

 (久住の好きなもの、喜びそうなものって、何だろう?)

 思い浮かぶのは、やはりイルカだ。

 (でも、イルカの何を贈ればいいんだ?)

 考えに詰まり、昴はあの時お土産として買ったイルカの図鑑をパラパラとめくる。

 ロイヤルローズカンパニーとの一件で、昴は今後の取り引きを担当することになり、社内でも昇進した。

 おまけに、驚くほどのボーナスが振り込まれていたのだ。

 だがこれは、全て自分ではなく心が受け取るべきものだと昴は思っていた。

 心のおかげで、サラはあんなにも日本での暮らしを楽しむことが出来たのだから。

 とはいえ、心がすんなりお金を受け取るとも思えない。
 それならせめて、何か心が喜ぶものをプレゼントしたいと、昴はあれこれ悩んでいた。

 その時、ふいにインターフォンが鳴る。

 宅配便か?と気軽にモニターを見た昴は、そこに映る人物に驚いて慌てて応答した。

 「く、久住?どうした?」
 「伊吹くん、あの…。急にごめんね。私…」

 たどたどしく呟く心の小さな声に、昴は、とにかく上がって来てと言ってロックを解除する。

 待ち切れずに玄関のドアを開けて廊下に出ると、エレベーターを降りた心が、ゆっくりとこちらに向かって来た。

 「久住?どうかした?」
 「うん、あの…」
 「とにかく入って」

 昴は、明らかにいつもと様子が違う心を心配し、部屋に上げた。
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