夕陽を映すあなたの瞳
 少し雑談をしたあと、片桐はテーブルにパンフレットを広げて見せる。

 「早速ですが、こちらが当店の春のパーティープランでございます」

 心は、綺麗な桜のイラストが描かれたパンフレットを覗き込んだ。

 「伊吹様のお話ですと、高校の同窓会、人数も35名様とのことで、こちらの2時間30分のプランはいかがでしょうか?お料理はビュッフェスタイル、お飲物はアルコールも含めたフリードリンクとなっております」

 昴がある程度、事前に話をしておいてくれたらしい。
 それに見合ったプランの見積もりも、片桐は準備しているようだった。

 心が身を乗り出していると、昴がパンフレットを心の前に引き寄せてくれる。

 ありがとうと言って、心はパンフレットのメニューの項目をじっくり見てみた。

 ピザやパスタ、パエリアやリゾット、サラダなどの他に、アボカドとサーモンの生ハム巻き、鴨ロースのハニーマスタード添えや鯛のカルパッチョ、チキンのトマトクリームカチャトーラ、特製ビーフシチュー、デザートやフルーツも豊富にある。

 (うわー、どれもこれも美味しそう!)

 写真を見ながらそう思った時、ぐうーー…と、心のお腹が鳴った。

 一瞬の静けさのあと、昴がぶっと吹き出す。

 「久住、分かりやすいな!あはは」
 「だ、だって、どれも美味しそうなんだもん」
 「ありがとうございます」

 そう言う片桐も、笑いを堪えている。

 「いやー、良かった。さっきまで言葉がちゃんと通じなくてどうしようかと思ってたけど、今なら分かる。久住、お腹減ってるんだろ?」
 「ちょ、そんな、確かめなくてもいいでしょ!」

 心は顔を真っ赤にして小声で昴を咎める。

 「まあ時間も時間だしな、俺も腹減った。片桐さん、コース料理を二人分お願いしていいですか?」
 「かしこまりました」

 にっこり笑ってから、片桐は一礼して部屋をあとにした。
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