夕陽を映すあなたの瞳
第二十章 沙良の涙
 愛おしく、大切な毎日が過ぎていく。

 心は日々、イルカ達に触れられる幸せを感じながら、いつもと変わらず仕事に向き合っていた。

 そんなある日。
 イルカショーの客席に沙良の姿を見つけた。

 照れ隠しなのか、桑田からショーを観に来るなと言われ、こっそりとしか観たことがないと以前話していたが、今日は良く見える中央の席に座っている。

 (きっと、ステージに立つ桑田さんを目に焼き付けたいのだろうな)

 そう思い、心も精一杯明るくショーを盛り上げた。

 「久住、退社したらスマホ確認しろ」

 早番で17時に上がろうとする心に、桑田が声をかけてくる。

 「は?どうしてですか?」
 「いいから見ろ。じゃあな、お疲れ」

 そしてそそくさと去って行く。

 なんだ?と首をひねり、言われた通りにスマートフォンを見て納得した。

 そこには、
 "心ちゃーん!今日17時上がりなんだってね。待ってるから、一緒にご飯食べに行かない?"
 と沙良からのメッセージが届いていた。

 心は思わず微笑む。

 (もう、桑田さん。それならそうと説明してくれたらいいのに)

 ふふっと笑いながら沙良に返信する。

 "沙良さん、もちろん行きまーす!これから出口に向かいますね!"

 そして二人は落ち合い、園内の海上レストランに入った。
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