夕陽を映すあなたの瞳
 「それでは、今年もみんなとの再会を祝して。かんぱーい!」
 「かんぱーい!!」

 河合先生の音頭で、1年ぶりの同窓会は幕を開けた。

 あれから1年。
 長いようで短い。

 独身だった女の子が何人か結婚し、既婚者だった女の子は出産して赤ちゃんを連れて来ていた。

 「おいおいー、孫抱いてる心境だぞ」

 未だに独身の河合先生は、教え子の赤ちゃんを恐る恐る抱いて、嬉しそうに笑う。

 慎也と愛理は、去年の同窓会の様子を動画に編集してくれており、それを鑑賞しながら皆で盛り上がった。

 ビンゴ大会では、去年皆が心と昴の為に集めてくれたお金を使って、慎也が豪華な景品を用意していた。

 景品を狙う皆の表情は真剣そのもの。
 今年も大いに盛り上がった。

 ビンゴのあとは、それぞれ歓談とデザートタイムとなり、心は二次会のお店の地図を手に、テラスの入り口にいる昴のもとへ行く。

 「伊吹くん、このあとの移動なんだけど…」

 そう言って顔を上げた時、昴に話しかける声が聞こえてきた。

 「伊吹くん、私、高校時代からずっと伊吹くんのことが好きだったの」

 思わず心は、近くの観葉植物の後ろに身を潜める。
 そっと覗いてみると、真紀が昴に話しかけていた。

 「去年の同窓会でまた会えて、嬉しかったけど勇気がなくて…。今年こそは告白しようって決めてたの。伊吹くん、私とつき合ってくれませんか?」

 心は、悪いとは思いつつ気になって仕方なく、固唾を呑んで聞き耳を立てる。

 すると、いつもと変わらない口調の昴の言葉が聞こえてきた。

 「ありがとう。気持ちは嬉しいけど、俺、つき合ってる人がいるんだ」
 「え、そうだったんだ」
 「ああ。だからごめん。じゃあ」

 そう言って昴は去って行く。

 (伊吹くん…。いつの間に?)

 心は呆然としながらその場に立ち尽くしていた。
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