夕陽を映すあなたの瞳
第二十二章 優しい世界
 「師匠ー!いや、仙人様ー!人間界へウェルカムバーック!!」

 慎也が昴に抱きつく。

 「やだ!もう、慎也ったら。何よそれ。ねえ?心」

 愛理が心に苦笑いしてみせる。
 心もふふっと笑い返した。

 「しっかしもう、何がなんだかよ。二人とも、一体どうやって今に辿り着いたの?」

 心と昴がつき合い始めたことを知った愛理と慎也は、すぐに4人で会おうと心達を呼び出したのだった。

 「どうって…。それはまあ、色々あって」

 心が言葉を濁すと、愛理はますます感心する。

 「凄いわねー。まさか心が、あの心が!しかもあの昴と!こんな大人な恋愛するなんてねー。でも良かった。一時は私の知らない心になっちゃった気がしてたけど、やっといつもの心に戻った気がする。あー、嬉しい!」

 そう言って愛理も心に抱きつく。

 「だよな!俺もようやくいつもの昴が戻ってきて、嬉しいぞ!」

 愛理と慎也に抱きつかれながら、心と昴は微笑み合った。

 また別の日。
 同じように心に抱きついてきた人がもう一人…。

 「いやーん!心ちゃーん!!もうもう、私、嬉しくって!」

 久しぶりに会うなり、沙良は心を力いっぱい抱きしめる。

 「ああ!良かった。何が良かったって、伊吹くんよ!やっと、やっと報われたのね!私には、あなたの一途さが良く分かる。よくぞここまでがんばってくれたわ!どんなに辛く険しい道のりだったことでしょう。でもあなたは決して諦めなかった。偉いわ!鈍感な人に立ち向かうのは、並大抵のことではないものね。おめでとう!そして、ありがとう!伊吹くん!」
 「いや、あの、私、心ですけど…」

 握った手をブンブンと振られながら、心は沙良の勢いにタジタジになる。

 とにもかくにも、こんなにも自分達の交際を喜んでくれる人達に、心は胸が熱くなった。

 もちろん、アメリカのサラも。

 おめでとう!のあとに、一体いつまでかかったのよ?!遅すぎるわ!と小言を言われたけれど…。

 そして、結婚式は早く挙げなさい!必ず呼んでね!と念を押された。
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