夕陽を映すあなたの瞳
 「クララ、おはよう!チャーリーも元気?」

 いつもと変わらず、心はイルカ達に明るく声をかける。

 ルークは?と探していると、スーッと水面の下を横切る姿が目に入る。

 (…来たわね)

 心はじっとタイミングを計り、ルークが飛び上がった瞬間、大きく後ろに飛び退いた。

 パシャン!と水しぶきが上がるが、心までは届かない。

 「へっへーんだ!どうよ?ルーク。今日は私の勝ちだもんね!」

 すると後ろから、桑田の呆れたような声がした。

 「久住、お前なあ。そんなこと言ってる時点でルークと同レベルだってば」
 「そんなことないですよ。だって私、ルークの動きに気付いて見事に回避!私の方が知能指数上ですよねー」
 「はあ、やれやれ。お前、彼氏が出来たっていうのに、全然成長してないのな」
 「……桑田さん。いいんですか?私にそんな口きいて。あんなことやこんなこと、みんなにバラしますよ?」

 心の冷たい口調に、桑田は急に焦り出す。

 「な、なんだよ?あんなことって…」
 「その1。沙良さんの妊娠が分かった時、ワンワン男泣きしたこと。その2。今では毎日、沙良さんのお腹に向かって、赤ちゃーん、パパでしゅよーって…」
 「わーーー!バカ!やめろ!それ以上言うな!」

 ふふん!と心は、得意げに反り返る。

 「まだまだネタは上がってるんですからね。桑田さん、私を怒らせたらどうなるか…」
 「分かった、分かったから!いいか、絶対誰にも言うなよ?」
 「はーい、分かってますって。あ、佐伯さん!おはようございまーす!」
 「く、久住ーー!絶対言うなよー!」

 そんな心と桑田を、イルカ達がケケケケ!と笑って見ていた。
< 138 / 140 >

この作品をシェア

pagetop