夕陽を映すあなたの瞳
 「まったくもう!よりによって朝っぱらから、なんでこんなにずぶ濡れに…」

 ブツブツ言いながらタオルで頭を拭いていると、後ろから、久住ーと、桑田の声がした。

 「お前、同窓会の幹事って言ってたけど、肝心の同窓会はいつなんだ?シフト調整するから、日程決まったら…って、なんでそんなにびしょ濡れなんだ?」

 心は唇を尖らせて、チラリとルークを見る。

 「はあー、お前またルークにやられたのか?お前くらいだぞ?ルークにナメられてるのは」
 「べ、別にナメられてなんか…」
 「いーや、ナメられてる。イルカの知能指数って凄いんだからな。それにルークは、人を見る目があるからねー」

 しみじみと言う桑田に、心はますます頬を膨らませる。

 「イルカの知能指数って、人間の6歳前後じゃないですか!」
 「そうそう、お前と同い年だな」
 「私の方が20歳も上です!」
 「それは実年齢だろ?知能指数はルークと同じくらいじゃないか?」

 えっ…、と心は真顔になる。

 「そ、そうか。実際の年齢と知能指数はイコールじゃないんですね?じゃあ私、何歳くらいなんだろう…。ルークより下なのかな」

 ブハッと桑田は吹き出して笑い始める。

 「お前、そんなこと考える時点で既にルークより下だぞ?しっかりしてくれよ。ルークがショーの最中に、しれーっとサイン無視してジャンプしてくれなくなるぞ」

 うぐっと心は言葉に詰まる。

 「ほら、がんばって知能指数上げろよ!」

 桑田にポンと肩を叩かれ、心は、はあーとため息をついた。
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