夕陽を映すあなたの瞳
 「皆さん、こんにちは!イルカショーへようこそ。かわいいイルカ達が繰り広げる素晴らしいパフォーマンスを、どうぞ最後までごゆっくりお楽しみください!」

 イルカショーが行われるスタジアムに、マイクを通した心の声が大きく響く。

 1日3回行われるイルカショーは、この水族館で1番人気があるショーで、ほぼ毎回客席は満員になる。

 チームの紅一点の心は、主にMCを担当しながら、他のトレーナー達と一緒にショーを作り上げていく。

 「まずは、軽くジャンプでご挨拶!トップバッターはカマイルカのクララ!」

 そう言って心はクララの前に立ち、アイコンタクトを取ってから、クララの前に出していた右手を素早く斜め上に振った。

 クララは身を翻して水中に潜ると、スピードを上げて泳いでから、軽々と空中にジャンプした。

 わあっ!と、歓声が上がる。

 心はホイッスルを吹いて、戻ってきたクララに魚をあげてから、次のイルカを紹介する。

 「次は、ジャンプの高さは誰にも負けない、バンドウイルカのルーク!」

 桑田が合図を出し、ルークはいつものように圧巻の高さでジャンプする。

 またもや歓声と拍手が起こった。

 「お次はクジラの仲間。大きな黒い体のオキゴンドウ、チャーリー!」

 スピードはやや遅いが、大きな体で飛び上がると、その迫力にまた拍手が起こる。

 そのあとも、ジャンプの種類を変えて次々と披露する。

 体を回転させながら飛ぶスピンジャンプ、後ろ向きにバク転するようなバックフリップ、天井から下ろされたバーを飛び越えるハードルジャンプ。

 他にも、水面に浮かんだボールを尾びれで弾くテールキック。

 水面に体を出したまま尾びれでバックしたり、トレーナーの投げた輪っかを口先でキャッチしたりと、イルカの持つ能力を存分に披露していく。
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