夕陽を映すあなたの瞳
 しばらくそんな会話をしてから、二人はようやく作業に取りかかった。

 心が愛理からもらった写真や動画、昴が慎也からもらったものも、全てパソコンに取り込む。

 編集ソフトにそれらを移すと、自動で編集されたものがすぐに出来上がった。

 「うわー、凄い!もう出来たの?」
 「ああ。これを手直ししてもいいし、1から自分で作ることも出来るよ」
 「えー、これで充分じゃない?1回再生してみて」
 「分かった」

 昴がカチカチとマウスを操作すると、音楽と共に、まるでドラマのワンシーンを切り取った総集編のように、次々と写真や動画が流れてくる。

 「ひゃー、素敵ねー。青春の1ページって感じ。あんなに古い校舎が、なんか美化されてるね」
 「ははっ、確かに。掃除道具すら尊いな」
 「うん、尊い!」

 あははと二人で笑いながら、動画を見つめる。

 「懐かしいなあ、文化祭。慎也くん!めちゃくちゃ弾けてる!」
 「相変わらずだな。慎也って、今もこのままって感じ」
 「うわー、修学旅行!楽しかったなー」
 「俺ら、夜中に騒いで先生にめっちゃ怒られたよ」
 「えー、そうだったの?知らなかった」

 やがて卒業式の写真が映し出される。
 
 「ううっ、涙が出てきちゃう」
 「ああ、思い出すな」

 まるで本を閉じるように、最後の1枚がゆっくりと消えていき、心は思わずため息をついた。

 「素敵…。こうしてみると高校時代って、宝物みたいな瞬間ばかりだったんだね」
 「そうだな。あんな貴重な時間、この先の人生であるんだろうかって思う」
 「本当に。大事な思い出だね」
 「ああ」

 二人はなんとなく見つめ合い、微笑んだ。
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