夕陽を映すあなたの瞳
 昴がパソコンで、動画の中にテロップを入れている間、心はぼんやりと窓の外を見ていた。

 時刻は夕暮れ。
 部屋の中にも、オレンジ色の光が射し込んでくる。

 (綺麗だな…。心の中までポカポカと温かくなる)

 心は、自分の気持ちを解放するように、ただじっと海に沈み始めた太陽を見つめる。

 「…久住?」

 ふいに声をかけられ、心は我に返った。

 「大丈夫か?」

 昴の心配そうな顔に、え?と心が首をかしげたその時、スッと心の目から涙がこぼれ落ちた。

 (…私、泣いてる?どうして…)

 慌てて指先で頬を拭う。

 「久住…、何か、その、辛いこととか、あったのか?」

 昴が控えめに声をかけてきた。

 「ううん、そんなことない。なんだろう?夕陽が目に染みたのかな」

 そう言って、ふふっと笑ったが、昴はまだ心配そうに心を見つめている。

 もう一度窓の外に目をやると、心はゆっくりと口を開いた。

 「おととい、仕事でね。凄く…落ち込むことがあったの」

 ポツリと呟くように話し始めた心の言葉を、昴は黙って聞いている。

 「でも、落ち込んだままではいられない。ちゃんと気持ちを入れ替えなきゃって、昨日がんばってきたの。明日からも、しっかりがんばる。そうやって、頭の中ではやるべきことを理解してる。だけど…、気持ちはついていけなかったんだね」

 再び心の目から、ポタポタと涙がこぼれ落ちた。

 「この景色、この夕陽、凄く癒やされる。私をそのまま包み込んでくれているみたい」

 そっか、と小さく呟いて、昴はいつまでも心を見守っていた。
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