夕陽を映すあなたの瞳
 「なあ、久住」

 食後のお茶を飲んでいると、ふと昴が思いついたように声をかけてきた。

 「ん?なあに?」
 「うん。あのさ、ちょっと頼みたいことがあって」
 「どんなこと?」
 「あの、俺が留守の間、もし暇な時間があれば、ここに来てくれないかな?」

 え?と、心は首をかしげる。

 「いいけど…。何しに?」
 「えっと、ロビーのポストに郵便物が溜まってたら部屋に持って来て欲しいのと、あと部屋の窓を開けて少し換気してくれたら…。俺のいない間、1回だけでも来てくれると助かるんだけど」
 「うん、分かった。でも、私が勝手に入っても平気なの?何か盗まれないか心配じゃない?」
 「久住がそんなことする訳ないだろ?それに、泥棒はそんなこと聞いてこない」

 それもそうか、と心は笑う。

 「じゃあ、これ。玄関のカードキー。これでエレベーターホールの入り口や、下のポストも開くから」
 「うん。確かにお預かりします」

 操作の仕方を教わりがてら、心は昴と一緒にマンションを出た。

 駅まで送ってくれた昴に、心は向き直って礼を言う。

 「今日は色々ありがとう!お邪魔しました」
 「こちらこそ、美味しい料理をありがとう。それと、留守番頼んでごめんな。無理だったら気にしないで」
 「うん、分かった。じゃあ、明日に備えて今日は早く休んでね。気をつけて行ってらっしゃい」
 「ありがとう!」

 二人は笑顔で別れた。
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