夕陽を映すあなたの瞳
 「はい、心。カフェモカ」
 「ありがとう。500円で足りる?」

 硬貨を出すと、慎也は手で押し戻した。

 「いいよ、これくらい。幹事も引き受けてくれたんだしさ。気持ち良くおごらせてくれ」
 「そっか。じゃあお言葉に甘えて。ありがとう」
 「どういたしまして。それより、なんの話してたの?」

 すると愛理が、あきれ気味に口を開く。

 「心がさー、もうからっきし恋愛に興味がないの。高校生の時のまんまよ」
 「へえー、じゃあ相変わらずもったいないことしてんのか」

 心は、ますます首をかしげる。

 「ねえ、どういう意味なの?さっきから」

 慎也と愛理は、互いに顔を見合わせてから心に向き直る。

 「お前さ、高校生の時モテてたの知ってる?」

 心は驚いて、ズズッとストローの音を立ててしまった。

 「ゴホッ、え、な、何?誰がモテてたの?」
 「だから、お前だよ。クラスの男子、結構心のこと狙ってたんだぜ?」
 「ま、まさか!それはないよ。私、1度も誰にもその…、そんなこと言われてないよ?」

 隣で愛理がため息をつく。

 「知らぬは本人ばかりなり、ね」

 そして、ぐっと心に顔を近づけた。

 「心、私がどれだけ男子に頼まれたか知ってる?心に俺のことそれとなく聞いてみてくれ、とか、デートの橋渡ししてくれ、とか。心はどういうタイプが好きなんだ?とかね」

 …はっ?と、心は目が点になる。
 固まっていると慎也が話し出した。
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