夕陽を映すあなたの瞳
 「心ってさ、見た目と中身が全然違うだろ?黙ってると、もの静かでおとなしくて、なんかこう、か弱そうに見えるらしい。だから、一部のそういうタイプが好きなやつらが、心っていいなーってずっと狙ってたぞ。なんだったかなー、真っ白なワンピースに麦わら帽子かぶってそう、とか言ってたな」

 ぶっ!と、愛理が吹き出す。

 「うーわ、凄い勘違い妄想ね。心がスカート履くなんて制服くらいなのに」
 「そっ!みんな、心の私服姿知らないんだよな。お前、集まってワイワイ出かけるのとかも来なかっただろ?」

 心は当時のことを思い出す。

 確かに、みんなでカラオケ行こう!と愛理や慎也に誘われても、心は断っていた。

 「うん。なんか私さ、大勢の人と過ごすの苦手で。気おくれするというか、居心地悪くなっちゃうんだよね」

 そういう性格だから、イルカ達を相手にする今の仕事を選んだのかもしれない。

 「まあな、それはいいんだよ。無理に行く必要なんてない。けど、それで余計に心を狙うやつらが増えたんだ。なんだろう、高嶺の花、みたいに?」
 「はあー?!絶対そんなことないって!私からしたら、愛理の方がよっぽどモテてたよ」
 「そりゃ、私はモテたわよ。でもね、心のことを好きだった子達はなんていうか、純粋に、心ひと筋!って感じだったの。心には、私みたいに、とりあえずちょっとつき合ってみない?なんて、慎也のノリで言い寄ったりしない」

 愛理の暴露に、今度は慎也が咳き込む。

 「バ、バカ!お前、今頃何言ってんだよ?」
 「あーあ、そんな軽い言葉に乗っちゃうなんて、確かにあの頃の私はバカだったわー」

 心は思わず、ふふっと笑う。

 「へえー、慎也くんと愛理ってそんな感じでつき合い始めたんだね。でも、私はとってもお似合いだなーって思ってたよ」
 「思ってたよーって、心、どこ見てたのよ?まったく。自分が見られてることも気付かないでさ」

 腕組みする愛理に頷いたあと、慎也はふと思い出したように言った。

 「で、そんな心と同じようなやつが、昴だよ」
 「そうそう!心の男版!」

 はあ?!と、心はまたしても慎也と愛理を怪訝そうに見る。
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