夕陽を映すあなたの瞳
 「昴もさ、一部の女子にやたらとモテてたんだよ。本人は全く気付いてなかったけどね。女の子達も、特にアタックしなかったし。多分、優等生で手の届かない存在、みたいに思われたんだろうな。告白とかせず、ただ遠くから見てるだけでいい、みたいな」

 慎也がそう言うと愛理も頷く。

 「つまりさ、見た目で勘違いされたんだよね、心も昴も。二人とも、周りの人とはちょっと違う雰囲気醸し出してたからさ。離れた場所から眺めるだけでいい、憧れの存在って感じに思われたのかな?ま、全然そんなんじゃないってことは、私も慎也も良く知ってるけどね」
 「ははは、そうだな」

 もはや二人の話について行けずに、半ばボーッとしていると、心の前に慎也が身を乗り出してきた。

 「だからさ、心配だったわけ。よりによって、昴と心が幹事になるなんて。どうやってコミュニケーション取るんだ?会話出来るのか?ってな」
 「そう。だから私と慎也でそれとなく見守ってたの。でも、思ったより大丈夫そうね」

 心は、へ?と間抜けな返事をする。

 「へ?じゃなくて!心、幹事やってて別に困ったことないか?昴とも、ちゃんと言葉通じてるか?」

 真顔で聞く慎也に、心は頷く。

 「うん、大丈夫だよ。伊吹くん、忙しいのにあれこれやってくれて。お店も伊吹くんのおかげで良い所を安くしてもらえたし、動画の編集もしてくれたの」
 「そっか!なら良かった」

 慎也が安心したように笑う。

 すると愛理が、
「でも、ちょっと気になるわー。心、昴とどんな会話してるの?」
と言い、慎也も
「あー、確かに。あの昴とあの心だもんな」
と頷いた。

 何よそれー?と、心は唇を尖らせる。

 「ね、メッセージとかどんな感じなの?」

 愛理が興味津々に聞いてくると、慎也もウンウンと頷く。

 「気になるわー。ちょっと教えて」
 「だから、普通だよ?この間は私から、無事にサンフランシスコに着きましたか?とか、慎也くんが河合先生に連絡してくれました、とか送って」
 「それで?昴の返事は?」

 えっと、なんだったかな…と、心はスマートフォンを確認する。

 「無事にサンフランシスコに着きました。オフィスで久住のメッセージを読み、コーヒーにむせ返ってしまいました。忙しいのに、色々とありがとう!とか、そんな感じ」
 「ん?何その、コーヒーにむせ返るって?」
 「さあ、なんだろね?」

 そう言って心がグラスのストローに口を付けると、愛理と慎也は互いに顔を見合わせながら眉根を寄せていた。
< 45 / 140 >

この作品をシェア

pagetop