夕陽を映すあなたの瞳
 そしていよいよ同窓会当日。

 佐伯のおかげで心は1日オフをもらい、家事をしてからゆっくり準備に取りかかる。

 メイクを済ませ、髪をハーフアップにすると、濃紺のミモレ丈のワンピースに着替えた。
 胸元に煌めくビジュー、袖はふんわりとした透け感のある素材で、スカートも軽く、少し揺らすと綺麗に広がる。

 クローゼットの中で、同窓会に着て行けそうなものはこれしかなく、おかげで迷うこともなかった。

 18時半に例のホテルのロビーで、昴や愛理、慎也と落ち合う。

 「おおー!心のワンピース姿、めちゃくちゃ久しぶりに見た!」

 開口一番そう言う愛理に、心は真面目に答える。

 「年に2回のスカートデーで、今日がその2回目なの。だから今年はこれで終了」
 「は?何言ってんの?」

 キョトンとする愛理を、今度は心がまじまじと見つめる。

 ワインレッドのタイトなワンピースは、スタイルの良い愛理にとても良く似合っていた。

 「愛理、本当に綺麗だねー。髪型もゴージャスだし、メイクも上手」
 「心だって、すっごくかわいいよ。普段のあのジーパンすっぴんの心とは別人だよ」
 「え、それって褒められてるの?」
 「もちろん!」
 「そっか。ありがと」

 二人で微笑み、心は昴と慎也を振り返った。

 「伊吹くんと慎也くんも、オシャレだね!かっこいい」

 昴はロイヤルブルーのノーカラージャケット、慎也は黒のスーツにパープルのネクタイを合わせている。

 「サンキュー、心。じゃあ行こうか」

 4人はエスカレーターで2階に上がる。

 「久住、そのワンピース凄く似合ってる」

 隣に立つ昴が、心に声をかけた。

 「ほんと?ありがとう。伊吹くんも、今日は一段とかっこいいよ」
 「そうかな?久住も、年に2回とか言わずに、またワンピース着て来なよ」
 「えー、だってそんな必要ないもん。ジーパンの方が楽だし」
 「そっか。ラフな格好の久住もいいもんな」
 「ふふ、ありがと」

 そんな二人の会話を、エスカレーターの一段上に立つ愛理と慎也は、固まって聞いていた。

 「ちょ、ちょっと聞いた?なにあの会話。この二人こんなこと話すの?」

 愛理が肘で慎也を突き、小声で話しかける。

 「ああ。聞いてるこっちが恥ずかしくなるな」
 「ほんとよー。赤面しちゃう」
 「いやー、二人ともお堅い話しかしないのかと思ってたのに、つき合い初めの中学生みたいじゃないか」
 「うんうん」

 その時、二人ともどこ行くの?と、後ろから心の声がした。

 「レストラン、こっちだよ」

 エスカレーターを降りて、ヒソヒソ話しながら真っ直ぐ歩いていた愛理と慎也は、慌てて戻る。

 「ごめんごめん」

 そして、肩を並べて楽しそうに話す昴と心を、後ろからじっと見つめてついて行った。
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