夕陽を映すあなたの瞳
第十一章 知らぬ間に大人に
 「慎也!こっちこっち!」

 カフェに入って来た慎也を、愛理は、待ってましたとばかりに手招きする。

 「よ、お待たせーってなんか、熱烈歓迎されてるな、俺」
 「別にあんたを歓迎してるんじゃないの!誰かにこの話を聞いて欲しいの!早く伝えたくて…」
 「わ、分かったから。ちょっと待て。コーヒーくらい買わせろ」

 慎也は愛理の手を振りほどくと、カウンターでコーヒーを買って戻る。

 「で?何をそんなに話したいんだ?」

 席に座ると、愛理はグイッと顔を近づいてきた。

 「ね、慎也は同窓会のあと、昴と何か話した?」
 「ん?いや。ちょこっと、お疲れーみたいなメッセージは送ったけど。それがなんだ?」
 「あのね、どうやら同窓会の日、心が昴のマンションに泊まったらしいの」

 ええー?!と、慎也は驚いて仰け反る。

 「嘘だろ?よりによってあいつらが?」
 「本当よ。だって私、心から聞いたんだもん」
 「え、心が言ったのか?昴のマンションに泊まったって?本当に?」
 「本当だったら!同窓会の次の日、お疲れ様ー、昨日は終電間に合った?って電話したのね。そしたら心、それが間に合わなくてさー、結局伊吹くんのところに泊めてもらったのって」
 「マ、マジかよ!」
 「そう。しかもね!私がびっくりして、え、心、昴と何かあった?ひと晩泊めてもらって、何かあったんじゃない?って聞いたの。そしたらね」

 うんうん、と慎也は先を促す。

 「心、ひと言サラッと言ったのよ。『別に?寝ただけ』って」

 ヒーーー!!と、慎也は後ろに倒れ込む。

 「あ、あの二人が…、あの昴とあの心が…。しかも、何その大人なセリフ。寝ただけって。なんか、そんなのでいちいち騒ぐ俺達をお子ちゃま扱いするみたいな…」
 「そうなのよ!だから私もそれ以上聞けなくてさ。だって、『寝たけど、それが何か?』みたいな雰囲気なんだもん」
 「うっひゃー!何?あいつらって純情ぶってるけど、実は1周回って、もの凄い大人なのか?」
 「そうかも…。私、心のこと今度から師匠って呼ぼうかな」
 「俺も、昴師匠って呼ぼう」

 真顔で頷いたあと、愛理は肝心の用事を思い出す。

 今日二人で会うのには訳があった。
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