夕陽を映すあなたの瞳
 「それで、どうする?集まったお金、何に使う?」

 同窓会が終わったあと、幹事の二人にお礼がしたいと、皆がこっそり500円ずつ送金してくれたのだった。

 合計金額17000円になり、このお金で二人に何かお返しをと、使い道を愛理と慎也で相談することにした。

 「どこかフレンチレストランにでも招待しようかと思ってたけど…。二人がそんな関係なら、ホテル宿泊券とかでも買う?」

 慎也が真剣に聞き、愛理も真顔で答える。

 「でも17000円だと、そんなにいいホテルには使えないんじゃ?」
 「だからさ、そこはほら、恋人達の大人のホテ…うぐっ」

 慎也の口を、愛理がガバッと押さえる。

 「バカ!何言ってんのよ?」

 誰かに聞かれなかったか、慌てて周りをキョロキョロする。

 「まったくもう…。あの二人がそんな所に行くはずないでしょ?」
 「分からんぞ。だって『寝たけど、何か?』な二人だぞ?」
 「そ、そうね。そう言えばそうだわ」

 愛理はだんだん自信をなくす。

 「私、なんだか心のこと、知らない人みたいに感じちゃう。なんでも話せる仲だと思ってたのに…。いつの間にか私の知らない、大人の心になっちゃった」
 「おい、そんな大げさな…」

 涙ぐむ愛理を、慎也がなぐさめる。

 「心だって、別にお前のこともう友達じゃないとか、そんなふうに思ってる訳じゃないだろ?」
 「それは、そうかもしれないけど…」
 「よし、分かった!じゃあ、またあいつらと会おう!俺、昴にも聞いてみるからさ。な?」
 「うん…」

 ようやく愛理が頷き、慎也も、よしと頷いた。
< 66 / 140 >

この作品をシェア

pagetop