夕陽を映すあなたの瞳
 「あ、そうだ。久住、これベッドの下から出てきたんだ。久住のじゃないか?」

 そう言ってポケットに手を入れた昴は、心の手のひらに小さな物を載せる。

 「なあに?これ」

 キラキラ輝く何かの飾りのようだったが、心に思い当たる節はない。

 「それ、久住が同窓会の日に着てたワンピースの飾りじゃないかな」
 「あー!そう言えばそうかも。あの時、私、ベッドの下にポーイってワンピース脱ぎ捨てちゃったもんね」
 「うん。その時に取れたんだと思うよ」
 「そうだね。ありがとう!」
 「どういたしまして」

 会話を終えて正面を向いた心は、向かい側に座る愛理を見て驚いた。

 「え、愛理?どうしたの?顔が真っ赤だよ」
 「本当だ。熱でもあるんじゃないか?」

 心配する心と昴に、愛理は必死に否定する。

 「ち、違うの!そんなんじゃない。大丈夫だから」
 「そう?でもなんか、涙目になってるし…」
 「こ、これは、その、ちょっとセンチメンタルになっちゃって…。心が、私の知らない所に行っちゃったみたいな」

 ん?と、心は首をひねる。

 すると、愛理の隣の慎也が、ポンポンと愛理の頭をなでた。

 愛理は、ううっと慎也の肩に顔を埋める。

 え?と、さらに心は首をひねった。

 「ねえ、愛理と慎也くんって、またつき合い始めたのかな?」

 心が昴の耳元に口を寄せてそう言うと、昴も小さく頷いた。

 「そうかもな。慎也は何も言ってこないけど、多分同窓会でまた盛り上がったのかも」
 「そうね。でも、良かったよね」
 「ああ、そうだな」

 二人でふふっと微笑み合い、また正面を向くと、今度は慎也も顔を赤くしている。

 (やだ!愛理も慎也くんも、つき合いたての初々しい高校生みたいね)

 心はもう一度、ふふっと昴に微笑みかけた。
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