夕陽を映すあなたの瞳
 「それで?慎也、俺達に何か話があるって言ってなかったか?」

 しばらくして、昴が切り出す。

 「あ、そ、そうですよね。師匠」
 「は?なんだ、その師匠って」
 「いえ、こちらのことでして。あー、その。今回お二人には、幹事として色々お世話になり、皆が何かお礼をしたいと、少しずつお金を送金してくれたのであります」
 「ええー?!みんなが?」
 「はい。それでですね、お二人にお食事券をお贈りしようと思ったのですが、その…、大人なお二人にはもっと違う形の方がいいかと悩みまして。ここはズバリお二人に聞いてみようとなった次第でございます」

 慎也の妙な口調のせいで話がすんなり頭に入ってこないが、どうやらクラスメイト達が、お金を出し合ってくれたらしい。

 心は恐縮した。

 「そんな、いいのに。気を遣ってもらうほどのことはしてないよ。それに当日もみんな、ありがとう!って声かけてくれたし。それで充分だよ。ね?伊吹くん」
 「ああ、そうだな。じゃあそのお金は、次回の同窓会の費用に充てたらどう?」
 「あー、いいね!うん、そうしよう」

 昴の意見に同意して、心は慎也に言う。

 「そうしてくれる?慎也くん。またみんなで集まりたいし、その時の為にとっておいて。ね?」
 「そ、そんな…。いいんですか?師匠。さすがは大人なお二人だなあ」

 隣の愛理も、うんうんと頷いている。

 心はまた首をひねって、昴と顔を見合わせた。
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