夕陽を映すあなたの瞳
 心達が通っていた高校は、東京と千葉のちょうど境目、住所で言うと千葉県だった。

 東京から通っていた生徒もいたが、多くは千葉県に住んでいて、心もそうだった。

 みんな今は、都内でひとり暮らしか都内で実家暮らし、千葉で実家暮らし、のいずれかだろうと思い、心はそう昴に説明する。

 "それなら、千葉にも帰りやすい都内のお店がいいかな?"
 "うん、それがいいと思う。伊吹くん、どこかいいお店知ってる?"
 "いやー、うーん、あ、ちょっと待って…"

 言われた通りしばらく待っていると、お店のホームページのアドレスが添付されてきた。

 "ここどうかな?仕事のパーティーで時々使ってるんだ"

 心は早速ホームページを開いてみる。

 湾岸エリアのホテルの中にある、イタリアンレストランだった。
 貸し切りで結婚式の二次会や、同窓会プランもあるらしい。

 (へえー、海が見えて素敵!ホテルだと、女子はお化粧室多くて助かるよね。でも値段が…。詳しくはご相談くださいって、凄く高かったらどうしよう)

 そう思ってメッセージを書くと、昴からの返事にはこう書かれていた。

 "少しは融通効くと思うんだ。俺、今度相談しに行ってみるよ"
 "あ、じゃあ私も行くよ"
 "え、ほんとに?わざわざ大丈夫?"
 "うん、私もどんな所か見てみたいし"

 女子の目線で、色々チェックしておきたかった。

 "そっか、分かった。じゃあ、仕事帰りに待ち合わせして行こうか。久住、いつがいい?"
 "夜だよね?今週は、19時以降ならいつでも大丈夫だよ"
 "了解。そしたら、明後日でもいいかな?"
 "うん、大丈夫。19時半に現地で待ち合わせる?"
 "オッケー。じゃあロビーで落ち合おう"

 短く、それじゃあお休みとやり取りを終えてから、心はもう一度お店のホームページを見た。

 (夜景も綺麗に見えるのね。楽しみ!)

 心は顔をほころばせて、明後日、何を着ていこうかと考え始めた。
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