夕陽を映すあなたの瞳
 デザートを食べ終わり、化粧室に行った沙良を待つ間、心は頬杖を付いて窓の外をぼんやりと眺めていた。

 (あー、それにしても、早く桑田さんと沙良さんのツーショットを見てみたいな。絶対お似合いだもんね)

 想像して、思わずふふっと笑った時、久住?と驚いたような声が聞こえてきた。

 えっ?と心は顔を上げる。

 小さめのキャリーケースを手に、スーツのジャケットを腕に掛けた昴が、ブロンズヘアの女性と並んでこちらを見ていた。

 「伊吹くん?え、いつ帰ってきたの?」
 「今朝羽田に着いたんだ。会社に顔出して、ランチしながら少し業務報告してから帰ろうと思って。ここ、会社のすぐ近くなんだ」
 「そうなんだね」

 すると、昴の隣の外国人女性がニコッと心に笑いかけた。

 「Hi!I'm Sarah」
 「え、サラ?!」

 思わず驚いてしまい、慌てて口を押さえる。

 「Sarah, she is my classmate of the high school」

 昴が紹介してくれ、心は立ち上がった。

 「Hi!I'm Kokoro」
 「Co…Sorry?」

 分かりやすく眉間にシワを寄せるサラに、心は言い直す。

 「Please call me Coco, if you'd like」
 「Oh, good. It's nice to meet you, Coco」

 昴が今度は心に説明する。

 「彼女は、アメリカの取引先のサラ。今は日本のグループ会社に出向してるんだ」
 「そうなのね。
 I'm glad to meet you, Sarah」

 サラと笑顔で握手を交わしてから、心はふと思い出して鞄に手を入れた。

 「伊吹くん。忘れないうちに返すね、カードキー。ありがとう!また使わせてもらっちゃった」
 「ああ、うん。こちらこそありがとう」
 「じゃあ、またね」
 「うん、また連絡する」

 サラがもう一度ニコッと心に笑いかけてくれ、心も笑顔で二人が近くの席に着くのを見送った。
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