夕陽を映すあなたの瞳
 いつしか花火も終わりを告げ、そろそろ帰ろうかと窓の下を見ると、車がびっしり並んで動かないままだった。

 「見て、traffic jam 凄いね」
 「ホント!」
 「もう少しここにstayした方がいいかもね」

 すると少し離れたところから昴の声がした。

 「二人とも、もうこっちにおいでよ」

 どうやら、心とサラが下を覗き込んでいるのを見ているだけでもヒヤヒヤするらしい。
 必死で手招きしている。

 「Sarah, do you know this? 彼ね、acrophobia なの。He is afraid of heights」
 「エー、ホント?ジャア why did you choose this room?」
 「でしょー?そう思うよね。なんと、misunderstanding だったんだって。
 second or fifth floorだと思ったの。25thなのに」
 「エエー?!シンジラレナイ」

 昴は、バツが悪そうに頬をポリポリと掻いてから、キッチンへ向かう。

 「ほら、座ってて。コーヒー淹れるから」

 はーい!と、心とサラはダイニングテーブルに向かった。

 渋滞が解消されるのを待ちながらコーヒーを飲んでいると、サラが Well…と口を開いた。

 「What’s the relationship between you two?」
 「え、どういう関係って…。だからhigh school classmateよ」

 心がそう答えると、サラは「I know that !」と言って聞き直す。

 「Are you guys seeing each other?」

 (え?このseeの意味って…)

 心がチラリと隣を見ると、昴はコーヒーを手に固まっている。

 (やっぱり…)

 そう思ってサラに聞いてみる。

 「You mean…つまり、are we dating or not?ってこと?」

 サラはUh-huhと頷く。

 Never!と心が答えると、サラは「ホント?」と昴を見る。

 昴はプルプルと頭を振った。

 「Not yet」

 (は?何言ってんの、伊吹くん)

 心は慌てて「No way!」とかぶせるように言った。

 「ニホンジン、スナオジャナイネー」

 サラは、やれやれと両手を広げてみせた。
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