「ガールズピンポン!」
 長谷くんは笑みを浮かべたあと、返事をして卓球台に向かった。
「よし、やっていくよ。レシーブの続きね」
 長谷くんはほほえんで、私に言った。私は元気よく返事をして、投げてくる球を打った。
 球を打っているうちに、長谷くんは段々と力強く声を発した。
「次! はい、そこもう少し前に出て。そうそう、はい!」
 長谷くんは真剣な表情で球を出す度に、声が大きくなった。
「…はい!」
 私もそれにつられて返事が大きくなり、球を出すスピードも速くなっていた。
 やりながら、なにかが私にわき上がった。女子卓球部の先輩たちになりたい。
 急に球がこなくなった。前を向いたまま、長谷くんを見つめる。
 どうしたんですか?と私は聞いた。
「…如月さん…いや、あなたは才能がある。今は上手じゃないけど、あなたはそのうち、上手になる。ボクを信じてみないか」
 長谷くんはそう言ってから、私を見た。
「…私に才能があるの?」
 思わず、ため口で聞いた。あっと口を開けて、目を丸くした。
 ラケットを卓球台に置き、長谷くんに聞き返す。
「ある。絶対に。一生懸命にやれば、必ず」
 長谷くんはラケットを持ったまま、真剣な表情で言う。
 私は黙っていた。そんなことを言われたのは生まれて初めてだったから。
「……いや……私になんて……」
 私は自分が出来ないことが多すぎて、本当に私には才能があるのか不安だった。
 小さい頃から、習い事をやっていたが続かない。手先が不器用で、新しいことに挑戦しても、両親にダメだったと報告する始末。
「……如月さん……如月さん……如月さん!」
「…あっ、すいません。聞いていなくて」
 長谷くんの声で、私は言葉を返した。本当は長谷くんの言葉を信じていない。
「如月さん。あなたはそのうち上手になる。ボクを信じてみないか」
 長谷くんは私の様子を見て、声を発した。
「上手になる? 私が」
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