世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「源課長、いえ、梅子さん、ここからは社長としてではなくあの子の伯母として話をさせてもらいます」

そのすごむようなまなざしに目を逸らしたくなる。

「あなたに世界はふさわしくない、別れて頂戴」

ふさわしくないという言葉に心臓がひんやりする。

(わかってたことじゃない……)

私は真っすぐに由紀恵を見つめた。世界と交際することは当然多くの人から反対される。若い世界の将来を考えれば、きっと年上の私が上手に世界を突き放して別れるのがいいことなんてはじめからわかっている。

(私がふさわしくないのなんて百も承知だったでしょ……それでももう止まれない……自分の気持ちに嘘をつくのはやめたから)

「……確かに私はこの会社のただの一社員であり、TONTON株式会社の御曹司である御堂くんとは立場上も釣り合わないと思っています。彼と私は年の差もありますし……正直……何度も諦めようと思いました。でも御堂くんはいつだって真っすぐに想いを伝えてくれて、そのかざらない素直な気持ちが嬉しくて……私も彼に対して特別な気持ちを感じていることに気づきました……陶山社長から反対されるのは重々承知の上です。それでも私は……彼が私と別れたいというまでは彼のそばで彼を公私共に支えていきたいと思っています……ですので御堂くんと別れることはできません……申し訳ありません」

私はガラステーブルに突きそうなほどに深く頭を下げた。由紀子のため息が頭の上から降って来る。

「ねぇあなた、おいくつ?」

頭を上げると小さな声で返答する。

「……今年三十五になります」

「三十五歳、一回りも上なのね。ちなみに結婚願望は?課長になって確かもう五年よね?キャリアを選んで結婚には興味ないのかしら?」

「それは……」

今の仕事は大事だ、でも結婚を諦めているかと問われたら即答できない。

「世界は今年まだ二十三よ。あなたに何て言ってるか知らないけど、あの子は結婚なんて考えてないわよ、当然でしょ?だからあなたの為でもあるのよ。少しでも結婚願望があるのなら、子どもの産める年までにさっさとお見合いでもして円満退職することね、ご両親も安心させてあげたらどうかしら」

桜子の心配そうな顔がすぐにうかんできて言葉に詰まりそうになる。桜子は私が社長であり世界の伯母の由紀恵に反対されてもなお、世界との交際を続けたいと話す私をどう思うだろうか。

それでも……もう後悔だけはしたくない。
人生は泣いても笑っても一度きりなのだから。
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