世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「世界に何言われて舞い上がってるのか分からないけれど、思ってた以上に諦めが悪いのがよく分かったわ。てことで貴方にチャンスを上げる。それがクリアできたら、今だけ交際みとめてあげてもいいわ」

「本当……ですか?」

「えぇ、いまから三週間である現場の見積書を作成してもらう。現場の施工関係者及び資材などの材料費・人件費含め必要経費の算出、そして現場全体でのうちの粗利率も踏まえて直ぐに商談にはいれる見積書を作成してほしいの」

私は目の前の資料に手を伸ばした。

「これ……駅前の都市開発で新しく建設予定のタワーマンションと大型商業施設……」

(殿村から以前暴れすぎ将軍のチケットと引き換えに、急ぎで作成した現場名称と同じだ)

「そうよ、この現場の営業担当は殿村伊織、先日あなたがこの現場の見積書作成したわよね?」

「あれもよくできてたけど、平凡な見積でとても商談には入れない上に先日、花田不動産の花田社長とお会いしてタワーマンションだけでなく商業施設も花田不動産が手掛けることになったの。それに伴って、もっと近代的で世間から見て目新しいものにしたくて建築設計を一からやり直したの。だから現場名称こそ同じだけれど、図面も納品予定の商品もまるっきり違うから」

資料を拾い上げてざっと目を通していくが、前回の図面と全く違う上にはるかに複雑になっている。三週間で果たして粗利益率だけでなく経費算出もした、完璧な見積書など作成可能なのだろうか。

それもこれだけ大規模な現場の見積作成は入社以来初めてだ。

(そもそも……経費は経理課のテリトリー……)

「そうよ、気づいたかしら?経費算出は経理課が得意よね。そしてあなたは見積が得意。この件だけどもう一人お声がけしてるの。誰だかわかるでしょ?」

「花田……心奈さん……?」

(あれ……花田不動産の花田って……)

「そうよ、心奈さんは花田不動産の一人娘であり世界の許嫁よ。彼女も世界のこと本気でね、私は彼女こそ世界の相手にふさわしいと考えてる。お家柄も間違いないしね。ただあなたが世界と簡単に別れないと分かっていたから、決着は仕事でつけるのがいいと思ったの。どうかしら?」

由紀恵がソファーに背中を預けると不敵に笑った。
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