世界くんの想うツボ〜年下ドS御曹司との甘い恋の攻防戦〜
「……お疲れ様です、殿村部長」

俺は自分のデスクに戻ると、椅子の背もたれに寄りかかりながら両腕を頭の後ろにまわした。

「梅子お疲れ様」

「お、おつかれ、殿村」

殿村はまるで俺の姿が見えていないかのように、梅子のデスクに近づくとパソコンをのぞき込んだ。

「どれどれ……さすが梅子だな、完璧」

(俺は無視かよっ)

「いまから印刷して私のハンコ押したら完成だから」

「ありがとう。これ梅子に」

殿村はコンビニ袋から、あんまんとホットココアを取り出すと梅子に手渡した。

「わぁ、おいしそうっ、ありがと。食べていい?」

「勿論。冷めないうちにどうぞ」

梅子はすぐにあんまんにぱくんとかぶりついた。

「梅子は好きだよな、その組み合わせ」

殿村は言いながら俺をチラッと見た。

(梅子のことは自分の方が知ってるってか。やっぱこいつ、むかつく……)

「うんっ。この取り合わせが一番疲れた脳みそがほぐれるっていうか、癒されるっていうか」

「ふっ、なら良かった」

梅子はさっとあんまんを食べ終わりココアを飲み干すと、印刷した見積書をコピー機の前に取りに行く。そしてデスクの引き出しから自分の印鑑を取り出すと押印して殿村に渡した。

「上役の承認済だし、私の印鑑もついてあるからすぐに商談にはいれるわよ」

「ありがとう。明日、土曜日なんだけど先方と約束があってね。本当助かったよ。梅子を駅まで送っていきたいとこだけど、まだ今日中の返答の仕事が残っててね、ごめん」

俺はすかさず二人の会話に割って入った。
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